「池野清 作品から考える平和」
7月1日(木)長崎市立大浦小学校にて出張授業を実施しました。
今年度より文化庁による地域と共働した博物館創造活動支援事業として長崎県美術館が取り組み始めたもので、収蔵作品を通して平和の視点から作品鑑賞を行うプログラムです。今回は、池野清の作品を5点ピックアップし、小学校の先生と授業・立案しました。
「自分ひとりでよく観察する→近くの2~3人と話し合ってみる→グループに分かれておしゃべり鑑賞をする→全体で意見を共有する→最後に自分ひとりで考えをまとめる」という流れでじっくりと作品を味わいました。
油絵作品って手触りはどんな感じだろう?においは?質感は?スタッフが制作したサンプルや模写作品に実際に触れてみました。


1人1台準備されたパソコンを使って作品画像をじっくり観察します。気づいたことはどんどん書き出していきます。


次に近くの人と考えを共有してみます。

次はグループ活動。自分が選んだ作品の前でおしゃべり鑑賞を行いました。
実寸サイズの複製画で本物の作品の大きさを実感。「葉っぱも花もついていない枝だけの木にみえる」「手をつないでいる親子かな」「色がやわらかくてきれい」などなど各グループでは想像を膨らませながら考えたことや感じたことを自由に話し合いました。





そして各グループで出た意見を代表2人が全体の前で発表し、共有しました。

最後に美術館スタッフのまとめの話を聞き、自分の感想をまとめました。
池野清は原爆症と闘いながらその生涯を閉じるまで静物や人物を題材に作品を描き続けました。そんな作家の作品と向き合い、対話を重ねていくと新たな視点が生まれ、多様な価値観に気づくことができます。このような活動の積み重ねがつまり未来への平和の継承や発信力となるのではないでしょうか。昨年の丸木作品鑑賞に続き、平和教育の視点を含んだ鑑賞教育プログラムを実践しました。
<児童のみなさんの感想より>
・池野さんが絵で伝えたかったことが少しわかった気がします。私は絵を描くことが大好きなので、池野さんみたいに感情をこめて描いていけたらと思います。
・他の人の意見を聞くと自分とまったく違う考えをもっていて1つの絵でも一人ひとり見方が違うんだなと思いました。
・池野さんの作品は全体的にシンプルだと思いました。どの作品もいろんな色が重なり合っていて描かれていました。
・班のみんなで意見を出せました。おもしろい意見や納得できる意見がたくさん出ました。自分の意見を持つことでたくさんの意見が出ることが改めて分かり、楽しかったです。
・絵を見て油絵のよさを知った。色がたくさん使われていてこの塗り方にしか出せない「よさ」があった。色のバランスや使っている色に池野さんのこだわりを感じた。亡くなる直前に描いた3つの作品が木に関係するものでつなげてひとつの作品なのかなと思った。
作家や作品のことをより深く知る、感じたことを自分の言葉で相手に伝える、自分とは違う考えを受け入れる、このような学びをくりかえす中で共感や理解といった感覚が自然と身についていくのかもしれません。自分が選んだ作品に少なからず愛着を感じてくれた児童もいて、とても嬉しく思いました。
今回、授業の立案・実践に関してご協力いただいた先生方、それから大浦小学校6年生のみなさんありがとうございました。
ー展覧会のご案内ー
「長崎の美術7 池野清」展
会期|2021年8月6日(金)~11月7日(日)
場所|長崎県美術館 常設展示室第1室 ※県内小中学生は無料です。
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