日韓文化交流事業 対馬と釜山の高校生が選んだとっておきの風景

長崎県美術館は、2008年に韓国・釜山市立美術館と交流を開始し、これまで数多くの協働事業を実施しています。2021年度は、対馬と釜山の高校生が、それぞれの住む地域のとっておきの風景を基に風景画を制作し、その風景について相手の国の言葉で伝え合う、オンラインによる交流プログラムを行いました。
対象は、韓国語を学ぶ長崎県立対馬高等学校2年生29名と、日本語を学ぶ韓国の釜山情報観光高等学校1年生20名です。風景画制作にあたっては、長崎県五島市出身のアニメーション美術監督・背景画家である山本二三氏の協力を得ました。
山本氏は、ライフワークとして出身地の五島の情景を描く「五島百景」に長年取り組み、2021年夏にはその完成を記念して企画展「山本二三展 the BEST」が当館で開催されました。
本事業は導入、制作、発表の3つのプロセスを経て実施しました。

導入にあたる「交流会」では、高校生たちが、お互いの学校や身近な風景を紹介し、風景画制作というアート活動に挑戦する意欲を高めました。風景を紹介しあう中で、友だちと遊びに行く場所やおすすめのデートスポットなどについて質問があり、両会場を沸かせました。また、山本二三氏からビデオレターというかたちで、作家自身の出身地や身近な景色からどのような風景画を生み出していくのかをお話しいただきました。これらの活動を通して、高校生の風景を見る目を養い、制作へとつなげていきました。

次に「風景画制作とプレゼンテーション準備」として、自分の住む地域で「空と雲のあるとっておきの風景」を探し、その風景を描き、説明を考えながら文章にし、発表練習を行いました。

「風景画発表会」では、高校生たちは自ら作成した風景画と文章を基に、グループ別にプレゼンテーションを行った後、各グループの代表者が全体に向けた発表をし、お互いの住む地域へ興味を深めながら、国を超えたコミュニケーションを楽しんでいました。
生徒たちの活動をオンラインで視聴していた山本二三氏から発表会の講評があり、各高校の代表生徒が活動全体に対する感想を述べました。そして最後に釜山市立美術館と長崎県美術館スタッフからコメントと挨拶をし、本活動を締めくくりました。
高校生からは、風景画制作を通して、自分の暮らす土地に新たな発見があったという感想がありました。生徒は、自分で描いた風景画を使いプレゼンテーションを行うことで、アートを交えたコミュニケーションを学び、それぞれの国の風土や文化への理解を深めました。
スクリーンやパソコンの画面越しではあっても、親しく手を振り合い、笑みを交わし、共に真摯に学びあう日韓の高校生に、次世代の日韓交流の姿がみえました。