長崎県美術館 メルマガ(vol.74)

件名
長崎県美術館 メルマガ(vol.74)
配信日時
2010/9/30 17:47
本文
(vol.74)──────────────────────────

メルマガ長崎県美術館

□───────────────────────○2010/9/30


INDEX

1)館長コラム

2)展覧会情報
・次回企画展「画業60年 松尾敏男回顧展」
 ・美術館コレクション展

3)教育普及・生涯学習事業
 ・長崎県美術館名品展 移動美術館 art moving in ごとう

4)注目イベント
 ・井谷俊二スペイン音楽ピアノリサイタル

5)ミュージアムショップ
 ・オリジナルグッズ「Drawing apron(ドローイング エプロン)」を販売中!

□─────────────────────────────○


1)館長コラム
─────────────────────────────── 
「画業60年 松尾敏男回顧展」に想う   館長 米田 耕司
─────────────────────────────── 
 
「暑さ寒さも彼岸まで」はよく言ったものです。
この頃では朝夕は涼しく感じられるようになってきました。
長崎では「おくんち」が済むとようやく秋が来るといわれています。
季節の変わり目です。皆様ご自愛ください。

いよいよ本格的な芸術の秋到来です。10月からの企画展は長崎が生んだ
日本画家・松尾敏男の画業60年の回顧展が間もなく6日からオープンします。
私にとっても前任の千葉県立美術館の学芸員時代から約40年近い
お付き合いをいただいています。3年半前に長崎に着任早々ご連絡があり、
長崎に帰省される度にお会いしています。

松尾敏男は長崎出身の日本画家です。その故郷で松尾敏男の画業を
一望する展覧会を開催することは大変意義深いことです。
現在、故平山郁夫画伯の後任として日本美術院理事長を務める松尾敏男は、
日本芸術院会員、文化功労者です。ここ2年は選が無かった美術部門の
文化勲章候補の最右翼といわれています。
長崎市今籠町(現・鍛冶屋町)に生まれ、3歳までそこで過ごしました。
その生家があったのは黄檗宗の古刹・崇福寺の有名な朱塗りの山門の
右脇にある駐車場の辺りです。松尾は幼少であったにも拘らず自宅の側に
松の樹が立っていたことをはじめその時代を鮮明に覚えており、
今なお自らのアイデンティティを長崎に求めています。

17歳のときに生涯師と仰ぐことになる堅山南風に師事し、戦後新進の
日本画家としてスタートを切り、以後院展を主な舞台として60年間
たゆまぬ努力を積み重ね、名実ともに日本画壇を代表する画家としての
地位を築き上げました。
松尾の取り上げるモチーフは実に幅広い。画業初期こそ伝統的な花鳥画に
取り組んでいましたが、徐々に幅を広げ、当時日本画ではタブーとも言える
ミイラを描いた《樹海》(東京国立近代美術館蔵)を発表するなど、
新しい現代日本画の創出を目指しました。それらの作品は人間の生と死を
見つめた松尾の心象風景ともいえるもので、深い精神性を湛えたこれらの
作品により、松尾は新境地を開いたといえます。松尾のエポックとなった
《樹海》は今回の長崎展でのみ展示されます。

松尾はその後、より人間の内面へと踏み込んだモチーフを
模索するようになります。画家として転機となったインドへの写生旅行中に
描かれた《貧しき人》(長崎県美術館蔵)や《サルナート想》(日本藝術院蔵)は、
人間の存在意義を改めて問い直したという意味で、その代表例です。
こうした前衛日本画家としての活動を経た後、松尾は伝統的な水墨画へと
向かいます。また一方で、晩年の師を描いた《南風先生像》や映画評論家
顔負けの映画好きである松尾の憧れの女優を描いた《ミッシェル・モルガン像》など、
肖像画家としての才能を余すところなく発揮しました。また、80年代以降、
インドや中国などアジア諸国だけではなく、ヨーロッパ各地に取材旅行に出かけ、
《月光のサン・マルコ》や《朝光のトレド》(長崎県美術館蔵)など、
日本画の顔料では捉え難いヨーロッパ独特の堅牢な建築物に果敢に取り組みました。

松尾の作品を改めて見直してみると、全ての作品において
松尾の深い精神性に裏付けられた静寂さが漂っていることに気付くでしょう。
日本人の心で感動して描く絵が日本画だという松尾の精神とともに、
日本美術院の理念ともいえる日本画の伝統と革新の両立を目指して
邁進してきた松尾の求道的な態度が表出したものと思います。
本展覧会では、画家の自選による44点の作品を一堂に紹介します。
当初予定の作品が全て展示されるのはここ長崎県美術館のみということで、
「画業60年 松尾敏男回顧展」の完全版ということになるでしょう。
どうぞ、皆様のご高覧をお待ちしています。

 
================================
================================


2)展覧会情報
─────────────────────────────── 
■次回企画展(企画展示室)
○10月6日(水)-11月14日(日)
「画業60年 松尾敏男回顧展 」
─────────────────────────────── 
長崎が生んだ日本画家・松尾敏男(1926- /日本美術院理事長)は、
80歳を超えてなお瑞々しい感受性をたたえた作品を生み出しつづけています。
画業60年を機に作家自らが精選した代表作44点によって、彼の豊穣な
日本画の世界をお届けします。

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/kikaku/index.html


関連企画
-------------------------------------------------------------
松尾敏男氏によるギャラリートーク
-------------------------------------------------------------
松尾敏男氏ご本人によるギャラリートークを開催します。

◇日時:10月6日(水)10:00より、10月23日(土)14:00より、11月13日(土)14:00より
◇会場:企画展示室
※無料(ただし本展観覧券が必要)

───────────────────────────────
松尾敏男氏によるサイン会
───────────────────────────────
松尾敏男氏ご本人によるサイン会を開催します。ぜひご参加下さい。

◇日時:10月6日(水)11:00より
◇会場:企画展示室
※サインは本展図録をお買い上げの方、先着100名に限ります。

─────────────────────────────── 
■美術館コレクション展(常設展示室)
─────────────────────────────── 
常設展示室の第1室から5室では、当館所蔵の長崎ゆかりの美術とスペイン
美術を年数回の展示替えにより随時ご紹介しています。
エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示は、いよいよ10月24日まで!

現在開催中の展示はこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/index.html

《10月の展示替え》
-------------------------------------------------------------
第3室
2010年10月28日(木)-2011年1月23日(日)
「須磨コレクション (聖母マリア) 」
-------------------------------------------------------------
特命全権公使・須磨彌吉郎が第二次世界大戦中にスペインで蒐集した
作品の中から厳選してご紹介します。
今回は、数ある作品の中から聖母マリアにまつわる作品を特集して展示いたします。

-------------------------------------------------------------
第4室
2010年10月28日(木)-2011年1月23日(日)
「ゴヤ版画集 『戦争の惨禍』 3」
-------------------------------------------------------------
1808年5月2日マドリード市民の暴動をきっかけにスペイン独立戦争が
始まりました。戦争で多くの犠牲が払われる中、マドリードを襲った
飢饉によりさらに多くの命が失われました。
戦争の悲惨さ、不条理を冷徹な眼差しで捉えたゴヤの傑作版画集から、
一部を抜粋してご紹介します。

-------------------------------------------------------------
第5室
2010年10月28日(木)-2011年1月23日(日)
「スペイン近現代美術 3」
-------------------------------------------------------------
ピカソ、ミロ、ダリをはじめ、タピエス、アロージョなどスペイン出身の美術家に
よる20世紀以降に制作された作品をご紹介します。

================================
================================


3)教育普及・生涯学習事業
───────────────────────────────
■長崎県美術館名品展 移動美術館 art moving in ごとう
2010年10月26日(火)-10月31日(日)10:00-18:00
───────────────────────────────
シャガールのリトグラフやピカソのリノカット、長崎ゆかりの作家・山本森之助や
野口彌太郎の絵画に加え、五島ゆかりの作家・笠松宏有や菊畑茂久馬の
作品など、36点を展示します。
また、期間中、鑑賞教室、ワークショップを開催するとともに、
大人気の「木のプール」も登場します。


◇会場:福江文化会館 3階 展示室
※入場無料

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=mobile&id=705


================================
================================


4)注目イベント
───────────────────────────────
エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示関連企画
『井谷俊二スペイン音楽ピアノリサイタル』  チケット好評発売中!
───────────────────────────────
「粋と情熱」-スペイン、ピアノの詩人=アルベニスとモンポウの夕べ
長崎では演奏される機会が少ない近現代スペイン音楽。
スペイン美術と音楽のトークもお楽しみに!

◇日時:10月16日(土)20:00開場 20:30開演
◇会場:エントランスロビー
◇出演:井谷 俊二(ピアノ/活水女子大学音楽学部教授)
     川瀬 佑介(トーク/長崎県美術館学芸員)
◇料金:前売全席自由
      一般 2,000円 大学生以下 1,500円(展覧会観覧券を含む)
      プレミア・パートナーズ・キャンパス・年間パスポート会員 1,500円(コンサートのみ)

※本コンサートのチケットで、「美術館コレクション展」をご鑑賞頂けます。
※当日は各500円増

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/event/index.html


================================
================================


5)ミュージアムショップ
───────────────────────────────
オリジナルグッズ「Drawing apron(ドローイング エプロン)」を販売中!
───────────────────────────────
当館開館5周年を記念して、長崎出身のデザイナー平田慎二氏との
共同企画によるオリジナルグッズ「Drawing apron(ドローイング エプロン)」の
販売を開始しました。平田氏が一枚一枚手描きで描いた型を目安に、
1枚の布から簡単にエプロンが製作できるキットです。
付属の布用クレヨンや刺繍糸を使って、自分好みのデザインエプロンを
作ることができます。
子供用、大人用ともに各1,260円(税込) とお手ごろ価格も魅力です。
その他、新商品も多数入荷していますので、この機会にぜひお越し下さい。

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/goods/goods/new.html


□──────────────────────────────○

《お問合せ》長崎県美術館 長崎市出島町2-1 tel095-833-2110
【開館時間】10:00-20:00
【休館日】第2・第4月曜(祝日の場合は翌火曜)

《長崎県美術館メールマガジン》
 配信中止・配信先変更は、以下のホームページからアクセスできます。
http://www.nagasaki-museum.jp/

長崎県美術館──────────────────────────

ページトップへ戻る