長崎県美術館メルマガ(vol.117)
- 件名
- 長崎県美術館メルマガ(vol.117)
- 配信日時
- 2014/2/28 18:40
メルマガ長崎県美術館
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○2014/2/28
INDEX
1)館長コラム
2)展覧会情報
・ウォルト・ディズニー展
・ 渡辺千尋の仕事
・平成26年度企画展情報
3)コンサート情報
・イブニングライブ
4)ミュージアムショップ情報
・デイリーミスト
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○
1)館長コラム
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本と西洋の美意識の差」 館長 米田 耕司
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
美とはなにか。日本と西洋では美しいものそのものを愛する心は同じですが、
何を美しいと感ずるか、また、それをどのように表現するかという点では大きな
差異があります。そこで、歴史的・文化的な視点から考えてみます。
美という漢字は、中国からきたものですが、美とは大きくて立派な羊のことです。
だから羊に大きいと書いて美なのです。小さなものより大きな羊の方が豊かで
人にとって良いことがあるからです。古来日本では美のことを「うつくし」と
呼んでいました。奈良・平安の頃は、今日とは多少違った意味で用いられて
いたようです。例えば、奈良時代の山上憶良の「妻子(めこ)見れば、
めぐし(愛し)うつくし」という歌にみられるように、今日でいう愛らしい、
かわいらしいという意味だったようです。つまり、対象のかたちの特色よりも、
例えば妻子をみる自分の愛情表現の言葉だったわけです。
これは、自分にとって大事なもの、弱いもの(かわいいもの、小さいもの)への
愛情表現であり、平安時代になると清少納言の「枕草子」にある
「なにもなにも小さきものは、いとうつくし」というくだりにもよく表われています。
英語に直訳すると「スモール イズ ビューティフル」ということになるでしょう。
それでは、同じ頃に花や月が今日的な意味で美しいということをどのような
言葉で述べていたかと言うと、奈良時代は「くはし」、平安時代では「きよし
でした。「くはし」は今日の「詳しい」から類推されるように、「非常に細かいところ
まではっきりしている」ということです。万葉集の「いでたちの くわしき山ぞ」という
歌は山の細かい姿・形がはっきりわかるという意味で、それが同時に
今日の美しいにあたります。ここから、微細なものに対する視点という
日本人の美意識がわかるのです。
もう一つは「きよし(清し)」で、源氏物語に「きよらなる、たまのおのこみこさえ
生まれたまひける」という一節があります。これは清潔という意味ではなく、
「玉のように美しい王子様がお生まれになった」ということです。
以上に述べたことを西洋との比較によって整理すると、まず日本では、
美は対象そのものよりも、見る人の心情に結びつくという「心の美学」の
特質があります。一方ギリシャ以来の西洋では、対象そのものが、ある一定の
条件を具えていれば、見る人に関係なく、万人にとって美しいと考えます。
この一定の条件を探求するのが美学なのです。ギリシャ以来、どういうものが美か、
という問題はさんざんに議論されてきました。そして美の基準はギリシャで完成され、
それが西洋に継承されました。代表的なものを挙げれば、人体比例やシンメトリー、
あるいは幾何学的に完成された形が美しいという考えです。
また、「花はさかりに、月はくまなきものをのみ見るものかは」というくだりに
示されているように、日本では必ずしも完全なもののみが美しいものではない、
という美意識があります。これは見る人の心によって美が成立するという考え方で、
西洋と大きく異なるところです。
次に「くわし」に見られるように、小さいものや、細かいところに美を見いだす
という美意識ですが、これは西洋とは正反対です。アリストテレスが、
美を感ずるためには、ある程度のスケールの大きさが必要であると述べているように、
西洋では巨大なもの、圧倒的な力をもったものが美の条件とされてきました。
ここで、ギリシャ神話の「パリスの審判」を思い出してみましょう。エリスの黄金の
リンゴをめぐって、ヘラ、アテネ、アフロディテの三女神が「最も美しい女」を主張して
争ったので、なぜかゼウスはトロヤの王子パリスに判断を委ねました。そこでこれらの
女神はパリスに、「もし自分を選んでくれたら褒美をあげよう」ということで、
ヘラは「富みと権力」を、アテネは「戦争に負けない力」、そしてアフロディテは
「世界で最も美しい女性を妻とすること」を提案しました。
結果として、パリスはアフロディテを選び、褒美として人妻であったヘレナを
得たことでトロイ戦争が起こったのです。このエピソードで注目したいのは、
褒美として示された、富や権力、武力といったものすべてが美と結びついて
いることです。つまり、西洋ではギリシャ以来、いいものが沢山あればあるほど、
美は増大すると考えてきました。
これは、日本の「きよし」の美意識と全く逆です。きよい、ということは、本来、
汚れたもの、余計なものがないという意味であり、日本人はそこに美を見いだしました。
これは「切り捨ての美学」ないしは「否定の美学」であり、例えば絵画の表現を
例にとって見ると、西洋では何でも描くが、日本では「余白の美」といわれるように、
余計なものを切り捨てていく、ということにつながるでしょう。
このように、日本人と西洋人は何が美しいということに対する基本的な
考え方が異なり、それが美意識の差となるのです。
================================
================================
2)展覧会情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■企画展示室
○2014年2月22日(土)-4月6日(日)
ウォルト・ディズニー展
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数々のアニメーションや夢と魔法の国「ディズニーランド」を生み出し、
現在も世界中の人々に夢を与え続けるウォルト・ディズニー(1901-1966)の
生誕110年を記念した展覧会。多くの苦難と挫折を乗り越えながら夢を
実現させた彼の挑戦と刺激に満ちた生涯を、アメリカのディズニー本社所蔵の
資料や関連映像によって紹介します。
詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/kikaku/waltdisney.html
【関連企画ピックアップ】
……………………………………………………………………………………
デコレーション・マグネットのワークショップ
〇3月15日(土)、16日(日) 10:30-16:30(最終受付16:00)
……………………………………………………………………………………
ディズニーキャラクターのシールでデコレーションして、オリジナルのマグネットを作ろう!
詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/kikaku/waltdisney_03.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■常設展示室第1・2室
○3月14日(金)-6月8日(日)
渡辺千尋の仕事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
長崎市出身の渡辺千尋(1944-2009)。エングレーヴィングという難易度の高い
技法で独特の幻想的作品を残し、グラフィック・デザイナーとしても活躍、
更に長崎県有家町(現・南島原市)のセミナリヨ版画の復刻や頓珍漢人形の
再評価により長崎の歴史と文化の発掘にも尽力した彼の多面的な活動を紹介します。
詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/watanabechihiro.html
【関連企画ピックアップ】
※1と2は連続して行います(休憩あり)。片方のみの参加も可能です。
◇会場| ホール
◇定員|60名
◇参加費|無料
◇申込締切|3月17日(月)必着
……………………………………………………………………………………
1.トークショー「渡辺千尋さんのこと。」※事前申込制
鬼海弘雄(写真家)×門坂流(イラストレーター、版画家)
〇4月5日(土)14:00-15:30(13:30開場)
……………………………………………………………………………………
生前、渡辺千尋と親交の深かった二人が思い出やエピソードを語ります。
申込方法など詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?id=2508&command=lecture
……………………………………………………………………………………
2.エングレーヴィング技法の実演※事前申込制
門坂流(イラストレーター、版画家)
〇4月5日(土)15:45-16:45
……………………………………………………………………………………
エングレーヴィングの「彫り」から「刷り」まで、実際の作業のエッセンスを見せていただきます。
申込方法など詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?id=2510&command=lecture
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■平成26年度企画展情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
平成26年度の企画展が決まりました。
内容は決まり次第ホームページに公開します。お楽しみに!
……………………………………………………………………………………
片岡鶴太郎展-長崎椿-
〇4月12日(土)-6月1日(日) |会場|企画展示室
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?id=1121&command=plan
……………………………………………………………………………………
現代フランスを代表する日本人画家 光の画家 松井守男展(仮称)
〇6月7日(土)-7月13日(日) |会場|企画展示室
……………………………………………………………………………………
没後5年 -求道と鎮魂の絵画- 平山郁夫展
〇7月19日(土)-8月31日(日) |会場|企画展示室
……………………………………………………………………………………
魔法の美術館-光と影のワンダーランド
〇7月19日(土)-8月31日(日) |会場|県民ギャラリー
……………………………………………………………………………………
テオ・ヤンセン展 -砂丘の生命体-(仮称)
〇10月9日(木)-12月7日(日) |会場|企画展示室
……………………………………………………………………………………
ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-
〇12月20日(土)-2015年3月8日(日) |会場|企画展示室
……………………………………………………………………………………
「木梨憲武展×20years」INSPIRATION-その瞬間の好奇心
〇2015年3月6日(金)-4月12日(日) |会場|県民ギャラリー
================================
================================
3)コンサート情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
イブニングライブ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
毎月第2・4日曜日の夕方から夜にかけて活水女子大学音楽学部と
長崎大学教育学部の音楽家のみなさんが素敵な音楽を奏でます。
平成25年度は3月9日の活水女子大学が見納めです。
平成26年度は4月から新学年の皆さんも出演しますので、ぜひお楽しみ下さい。
……………………………………………………………………………………
○活水女子大学による演奏
……………………………………………………………………………………
◇日時|3月9日(日) (1)16:00-16:30 (2)18:00-18:30
◇会場|エントランスロビー
※入場無料
詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?id=2452&command=lecture
※3月23日(日)の長崎大学はお休みします。
================================
================================
4)ミュージアムショップ情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
デイリーミスト
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
天然除菌・抗菌スプレー「デイリーミスト」は、すべて天然由来成分(グレープフルーツや
米ぬか、サトウキビ等)からできており、おもちゃにスプレーした後お子様が口にしても
安全です。アルコールでは除菌できないノロウィルスも除菌ができる優れものです。
ぜひお試しください。
100ml¥840、300ml¥1,260(税込)
□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○
《お問合せ》長崎県美術館 長崎市出島町2-1 tel095-833-2110
【開館時間】10:00-20:00
【休館日】第2・第4月曜(祝日の場合は翌火曜)
《長崎県美術館メールマガジン》
配信中止・配信先変更は、以下のホームページからアクセスできます。
http://www.nagasaki-museum.jp/
長崎県美術館━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━