長崎県美術館 メルマガ(vol.39)

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長崎県美術館 メルマガ(vol.39)
配信日時
2008/2/27 13:22
本文
(vol.39)──────────────────────────

メルマガ長崎県美術館

□───────────────────○2008/2/27(毎月1回発行)

スペイン出張報告

皆さま、前号ではスペイン出張のためお休みさせていただきました。
長崎は2月7日から恒例の春節祭(旧正月)・ランタンフェスティバル
で賑わいました。立春とは名ばかりの余寒厳しい日々ながらも、
華やかな歌舞音曲と市民の意気込みによる数々のイベントを見ようと
観光客も数多く見受けられました。街中灯りが輝き、彩り豊かに春の
息吹を予感させる風物詩を楽しんでいるうちに2月も間もなく終わり
です。梅の便りが聞こえ春の陽光さえ感じます。
今回の出張の主目的はスペイン国立プラド美術館と当館の友好関係の
強化を具体化するためです。
1月20日は昼ごろに成田空港を出発し、1月25日の午前中に成田に帰
国の予定でした。
1日目の1月20日はマドリードに到着するだけの日でした。パリまで
の機中では思いがけず、旧知の神庭信幸さん(東京国立博物館保存修復
課長)と、同課塚田全彦さんとご一緒し、文化財談義もうれしいことで
した。ホテルに着いたら夜10時でした。相当寒いと覚悟して防寒着を
まとって行ったら夜でも気温13度には拍子抜けしました。
2日目の1月21日は午前中、国立ソフィア王妃芸術センターを視察。
ものものしい警備のピカソ「ゲルニカ」はじめダリの妹アナを描いた
「後ろ向きに座る少女」など沢山の懐かしい作品と充実したコレク
ションがいっぱいで満喫しました。美術館はコレクションが命だと改め
て思いました。
午後は、平成18年10月に当館が表彰を受けたカサ・アシア・マドリード
事務所のフェルナンド・デラヘ所長を表敬訪問し、日本とスペインの
文化交流がより密接になるように今後とも相互協力を約束しました。
3日目の1月22日は午前中にティッセン・ボルネミッサ美術館に行き、
世界第2位を誇る個人コレクションで中世美術から現代美術まで全部
実見してきました。
午後から、昨年10月20・21日当館を会場に開催しました「第10回日本・
スペインシンポジウム」の折に大変お世話になり、今回のプラド美術
館訪問についてアドバイスなど賜った吉川元偉・駐スペイン特命全権
大使のご招待を受け、大使公邸で歓迎昼食会を開催していただき、
スペインとの交流など示唆に富んだアドバイスをいただきました。
4日目がいよいよ本番です。約束の12時にプラド美術館本部6階で館
運営・学芸部門の総括責任者であるガブリエル・フィナルディ副館長
と面会しました。会談は予定時間を超えて午後1時30分に及びました。
はじめに、当館の開館に先立つ平成16年11月に金子知事とプラド美術
館の理事長との両館の友好促進に関する覚書の調印を受けて、今回
金子知事が私に託された親書をフィナルディ氏から、プラッシッド・
アランゴ理事長へ渡していただいた上で、両館の交流について協議を
行いました。主な協議は次の4点です。
1、「職員の派遣・交流」については平成20年度以降に、当館とプラ
ド美術館が相互に学芸員を派遣・交流し調査・研究を充実させること
を検討する。
2、「作品の借用」について、プラド美術館が当館に対し、17世紀の
名品を1-2点貸し出すことをプラド側で検討する。
3、当館の情報コーナーに、プラド美術館から提供される刊行物を
常設し、「プラド美術館紹介コーナー」として、日本におけるプラド
美術館の情報発信の拠点とする。
4、当館のミュージアムショップにおいて、従来以上にプラド美術館
のグッズを充実させ、全国へプラド美術館をPRする。

以上の他に、当館がスペイン美術を購入する場合にはプラド美術館が
作品に関する相談にのるなど、相互の情報交流を図るなど建設的な
会談になり同館との友好関係が深まり大変うれしいことです。
会談終了後昨年11月リニューアルした新館を含めて、たっぷりと鑑賞
をし、至福の時間を過ごしました。
5日目の1月24日は朝6時にホテルを出て、早い便にてパリ経由で機
中泊して成田空港に戻りました。成田の気温は零度で寒かったです。
以上が本出張のあらましです。旅行中のエピソードなどはまたの機会
と言うことで、ご報告といたします。


長崎県美術館 館長 米田耕司

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展覧会情報

■企画展 
○2/29(金)-3/30(日)
「黒澤明 絵コンテの世界」
世界中の映画人に多大な影響を与えた映画監督・黒澤明は、18歳で
二科展入選を果たすほどの画才の持ち主でもありました。本展は、
残された膨大な絵コンテの中から厳選された作品を展示。
巨匠・黒澤の創作の秘密に迫ります。
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=plan&id=253

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■美術館コレクション展
長崎県美術館は、主に長崎ゆかりの美術とスペイン美術を収集しています。
常設展示室ではこれらの作品を年数回の展示替えにより随時ご紹介いたします。

○2008年1/17(木)-3/9(日)
「長崎の美術3 渡辺与平展」
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/yohei.html
○12/11(火)-2008年3/23(日)
「須磨コレクション3」
○12/11(火)-2008年3/9(日)
「東松照明 長崎マンダラ 中国編」
○11/27(火)-2008年3/23(日)
「スペイン近現代美術3」
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/index.html

《展示替え》
○3/11(火)-4/27(日)
「タピエス『物質のまなざし』」
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=standing&id=356
○3/12(水)-6/8(日)
「医学史展覧会」-シーボルトがもたらした西洋医学-
○3/12(水)-6/8(日)
「『医学史展覧会』連携企画 川原慶賀と江戸後期の長崎派」
○3/25(火)-6/22(日)
「須磨コレクション1」
○3/25(火)-6/22(日)
「スペイン近現代美術1」

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注目イベント

■『黒澤明 絵コンテの世界』関連企画
○野上照代×平山進「黒澤映画を語る」
 ◇日時:3/8(土)14:00-15:30(開場13:30)
 ◇会場:ホール
 ◇定員:先着100名
 ◇料金:聴講無料。ただし、本展の観覧券が必要です。
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=657

○黒澤映画上映会「夢」
 ◇日時:3/9(日)、16(日)14:00-16:00(開場13:30)
 ◇会場:ホール
 ◇定員:先着100名
 ◇料金:入場無料、ただし本展の観覧券が必要です。
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=658

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■『美術館コレクション展』関連企画
○学芸員によるギャラリートーク
 ◇日時:毎週日曜日 15:00-16:00 (3/9、16はお休みします。)
 ◇会場:常設展示室
 ◇料金:観覧券が必要です。 

○アートボランティアによるギャラリートーク
 ◇日時:毎週土曜日 (1)13:30-14:15 (2)15:00-15:45(3/8はお休みします。)
 ◇会場:常設展示室
 ◇料金:観覧券が必要です。

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■教育プログラム
○アートクラブ参加者募集
恒例のこどもアートクラブとサマーアートクラブ、親子アートクラブ
にくわえて、今年から新たにおとなアートクラブがはじまります!
18歳以上を対象とした美術について楽しく学べるクラブです。
詳しくは、館内においてあるリーフレットをご覧下さい。
お申込みは専用ハガキで。
※応募多数の場合は、抽選となります。(初参加者を優先いたします)

『こどもアートクラブ、親子アートクラブ、おとなアートクラブ』
申込締切:4/18(金)必着

『サマーアートクラブ』申込締切:6/30(月)必着

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■イブニング・ライブ
毎月第2・4日曜日の夕方から夜にかけて活水女子大学音楽学部と
長崎大学教育学部の音楽家のみなさんが素敵な音楽を奏でます。
『美術』と『音楽』の融合…あなたの日曜の夕方から夜の過ごし方
に加えてみませんか?

○3/9(日)By活水女子大学 (1)15:30-16:00 (2)18:00-18:30
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=482

○3/23(日)By長崎大学 (1)15:30-16:00 (2)18:00-18:30
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=487

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今月のピックアップ

「黒澤明 絵コンテの世界」展 当館学芸員 福満葉子

 「黒澤明 絵コンテの世界」展は、映画監督・黒澤明(1910-1998)
が遺した絵コンテを紹介する異色の展覧会です。もともとは画家をめ
ざしていた黒澤は、映画界に入るにあたって描きためた絵をすべて燃
やしてしまい、以後は、絵を描くにしても時折スケッチをする程度
だったといいます。それが、1980年公開の「影武者」のために絵コン
テを本格的に描くようになってから、「乱」「夢」「八月の狂詩曲」
「まあだだよ」、そして未完の作となった「海は見ていた」までの6本
の映画のために、2000点にものぼる絵コンテを描きました。それらの
うち153点を展示するこの展覧会では、知られざる巨匠の一面をご覧
いただくことができます。
 「コンテ」とは、英語の「コンティニュイティcontinuity(もとも
との意味は、連続、継続など)」の略。シナリオに基いて、シーンご
とに実際の撮影に即したセリフや動き、撮影法などの指示を書き込ん
だもののことです。黒澤にとってそれは、スタッフに「こういう感じ」
ということを伝え、かつ自身が場面を具体的にイメージするためのも
のだったようですが、しかし彼の絵コンテは、単なる現場用の指示書
を超えた強さを持っています。それ自体が、彼の映画とはまた違う魅
力を備えた、独立した絵画作品になっているのです。その意味では、
絵コンテというよりも、ドローイングと呼んだほうがいいかもしれま
せん。
 「絵はあくまでも絵である。映画は動いているもので絵は動かない。
動いてなければ映画でない。その動きを画面にどうつかまえるか、が
問題だ」と黒澤は語っていますが、鉛筆、水彩、グアッシュ、クレヨン
などを使い、すばやいタッチで即興的に描かれた彼の絵コンテには、
まさしく「コンティニュイティ」をひとつの画面に凝縮する、たぐい
まれなる集中力と要約力が表れています。
 ところで黒澤の絵コンテを描かれた当時に見た者は、現場のスタッフ
だけではありません。そこには、映画会社の幹部やスポンサーが含ま
れていました。そもそも黒澤が「影武者」の絵コンテを描き始めたの
は、脚本が完成したのに資金を出してくれる会社が見つからなかった
ため、せめて記録だけでも残そうとしたことがきっかけでした。そう
して「こつこつと絵ばかり描いて」いたところ1年で200枚にもなり、
それがジョージ・ルーカスとコッポラの目にとまって、資金調達がか
なったのです。
 つまるところ、黒澤の絵コンテは、人を動かす強い力を備えていた
わけです。鮮やかな色彩と黒い線描による的確なデッサンで描かれた
さまざまな場面は、勇猛な武将の姿にしろ、可憐な姫君にしろ、凄惨
な殺戮シーンにしろ、あるいは幻想的な飛翔の光景にしろ、ダイナ
ミックで、絢爛豪華で、時に残酷で、グロテスクな魅力に溢れ、見る
者に忘れがたい強烈な印象を与えます。それらは、総合芸術として制
御され尽くした完成度の高い映画よりも、むしろ生々しいエネルギー
に溢れているといっていいかもしれません。
 70歳を越えてなお、みずみずしい創造力を漲らせた黒澤の、創造の
秘密に迫るこの展覧会。絵コンテ自体の独創的な魅力によって、映画
をご覧になった方にも、そうでない方にも、それぞれ楽しんでいただ
ける内容になっています。というより、会場のあちこちに掲示する黒
澤自身の言葉を読みながら絵コンテを見てゆくにつれ、無性に映画を
見たくなってくるはずです。
 ちなみに美術館のホールでは会期中に「夢」を上映します(3/9、
3/16)。夏目漱石の『夢十夜』を下敷きにしたこの幻想的なオムニ
バス映画、すでに映画館やご自宅でご覧になった方もいらっしゃると
思いますが、映画を見た後に(あるいは前に)黒澤の絵コンテの実物
を見ることができる、そんな機会は二度とありません。黒澤歿後10周
年の今年、長崎県美術館で、豊穣の黒澤ワールドを楽しんでいただけ
ればと思います。
 なお本展では、絵コンテに加え、絵コンテの幾つかを高精細印刷で
拡大した複製作品を展示します。まるで展示室に映画館のスクリーン
が出現したかのような、迫力の展示空間を合わせてお楽しみ下さい。

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カフェ情報

「ワインとオードブル」
カフェでは、スペイン産のカヴァ酒などの他に、フランス料理界の巨匠・
上柿元勝氏がセレクトしたフランス産ワインやシャンパンを取り揃え
ています。上柿元セレクションワインはボトルでお出ししていますが、
お気軽にご注文いただける他種類のフランス産グラスワイン(600円)も
取り揃えております。また、オードブルも充実しています。上柿元氏
の自家製黒胡椒風味のハムや鴨の燻製、ガーリックウィンナーを盛り
合わせた「自家製ハムとソーセージの盛り合わせ」(1,600円)やフラン
ス、ロレーヌ・シャンパーニュ地方の高品質生乳を100%使用したカマン
ベールチーズ、デンマークを代表するマイルドでやさしい味わいのマル
ボチーズなど4種類のチーズにくるみパンを添えた「チーズの盛り合わせ」
(1,000円)は、どちらもワインによく合います。
夜8時までオープンしていますので、絵画鑑賞のあとで、余韻にひたりな
がらワインとオードブルでゆったりとした大人の時間を過ごしてみませんか?


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《お問合せ》長崎県美術館 長崎市出島町2-1 tel095-833-2110 
【休館日】第2・第4月曜(祝日の場合は翌火曜)

《長崎県美術館メールマガジン》
 配信中止・配信先変更は、以下のホームページからアクセスできます。
http://www.nagasaki-museum.jp/

長崎県美術館──────────────────────────

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