長崎県美術館 メルマガ(vol.47)
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- 長崎県美術館 メルマガ(vol.47)
- 配信日時
- 2008/10/1 12:47
メルマガ長崎県美術館
□─────────────────────────○2008/10/1
「美術館教育の新たな船出」 長崎県美術館 館長 米田耕司
お彼岸を過ぎると朝夕はめっきり涼しくなり、夜の庭では秋の虫の
音が聞こえてきます。しかし、日中はまだまだ暑い日が続き蒸し暑さ
にうんざりしています。吉田兼好は「徒然草」でわが国の家屋は夏を
旨とせよ、と言っています。日本の風土には不向きの保温性の高い洋
服の生活改善を図るため、クールビズが採用されています。間もなく
10月衣替えです。陽気の変わり目です。風邪などお召しにならないよ
うにご自愛ください。
さて、暑い夏の一番印象の深い出来事は、(主催)目黒区美術館、
(協力)全国美術館会議で、8月28・29日に目黒区美術館を会場に
開催された教育普及のフォーラムでした。私も当館のエデュケーター
たちと参加しました。メインテーマは「フォーラム・連続公開インタ
ビュー 美術館ワークショップの再確認と再考察」。サブタイトルは
「草創期を振り返る」でした。これまで国際・国内のいろんな美術館
シンポジウムやフォーラムを経験してきましたが、教育普及をテーマ
にしたものの中でも秀逸でした。現在、わが国の美術館では教育普及
活動が様ざまに展開されて、ある種ブームになっています。
私は5月末に長崎市で開催された国立・公立・私立の美術館の連合
体である全国美術館会議総会で2年ぶりに理事に戻り、大原美術館長
の高階秀爾企画委員長のもとで教育普及部会長を務めています。この
フォーラムは、目黒区美術館を中心に、全国の教育普及部会のメンバー
が協力して開催されました。
私は1970年代に始まる公立美術館ブームの先駆けの頃に学芸員人生
が始まりました。これからの美術館は教育普及活動の時代と考えてい
ました。「みる・かたる・つくる」の三位一体の総合的な美術館教育
が必要と思い、これまで実践してきました。当時の美術館活動は展覧
会のみで、特別展の開催時に講演会を細々行っていたような時代でした。
わが国の美術館教育が活発になるのは1980年代です。ようやく1990年
代になり、海外の美術館と共に教育普及の国際シンポジウムが開催さ
れ、若いパネリストが「美術館教育という言葉は1980年代にアメリカ
から日本に入った。」と発言していましたが、欧米の美術館活動に憧
れるあまり、自国の美術館の歴史や実践に無関心であったことに、出
席していた古くからの美術館教育の実践者たちは驚き、顔を見合わせ
ました。
今回は現在第一線で美術館教育に取り組んでいる各館の8人に、そ
れぞれ1人60分、数人のインタビューアーが整理された質問をし、一件
ごとにコメンテーターがまとめと感想を述べるという構成でした。1日
4人ずつで2日間という実に密度の高い充実した内容でした。私と同世
代の老学芸員から40代、30代という中堅・若手がそれぞれの現場実践
を踏まえて語り合ったのです。この20年、30年、40年の全国の現場実
践の多様なエキスを共有できたことは素晴らしいことです。そして
2008年に開催したことが大事です。5年後では草創期の学芸員・エデュ
ケーターたちは退職しています。今回のフォーラムは、美術館使命と
役割を共有し、これまでの実践を歴史化することに成功した記念すべ
きものです。いずれ、この2日間の記録が出版される日を楽しみにして
います。
当館は開館以来、美術館教育に力を注いでおります。 ボランティア
をはじめ県民各位と力を合わせて楽しい美術館創りのため一層充実を
目指す所存です。よろしくお願いいたします。
最後に、10月3日から戦後日本彫刻界を牽引した舟越保武の回顧展
「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展を開催いたします。
今回列福式関連事業ということで74点の作品が長崎に参っています。
恐らく私の存命中にこれほどの作品が長崎のみならず展観されること
はないかと思います。清廉で静謐な舟越保武の世界をご堪能ください。
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INDEX
1)募集案内
2)展覧会情報
3)注目イベント
4)今月のピックアップ
5)カフェ情報
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1)募集案内
■「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展 関連企画
『親子鑑賞会、ワークショップ募集』
企画展「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展関連企画とし
て親子鑑賞会とワークショップを開催します。
○親子鑑賞会 ※事前申込制
学芸員やエデュケーターの解説を聞きながら、展覧会を鑑賞します。
子どもの皆様にはプレゼントを進呈!
◇日時:10/25(土)、26(日)各日11:00-12:00
◇対象:大人2名まで+子ども(3歳-中学生)
◇定員:各日10家族
◇料金:参加無料、ただし大人の方は本展の観覧券が必要
◇申込み締切り:10/13(月・祝)必着
申込み方法はこちら>>
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do;jsessionid=693579EBE4FCC06344698046C12A48CE?command=education&id=828
○ワークショップ 塑造「物語る手」※事前申込制
石粘土で自分の「手」をつくるワークショップを行います。
◇日時:11/1(土)10:00-15:00
◇対象:中学生以上
◇料金:参加無料、ただし高校生以上は本展の観覧券が必要
◇定員:20名
◇申込み締切り:10/17(金)必着
※昼食は各自でご用意下さい。
申込み方法はこちら>>
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do;jsessionid=0CE58182946E740866F0D2CAAE9F7885?command=education&id=829
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■「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展 関連企画
『オペラユニットLEGENDが奏でる美術館-舟越保武展鑑賞とコンサート-』
全員が国立(くにたち)音大卒業の男性オペラ歌手5人のユニット
LEGEND(レジェンド)。彼らが奏でる「舟越保武展」をお楽しみ下さい。
○LEGENDと観る「舟越保武展」
LEGENDと一緒に、学芸員による解説を聞きながら「舟越保武展」を鑑賞します。
◇日時:11/14(金)16:00-16:40
◇場所:企画展示室
◇定員:30名
◇参加費:無料(ただし高校生以上は観覧券が必要)
◇申込締切:11/3(月)必着
※LEGENDから特別プレゼントあり
○LEGEND平和の祈りコンサート2008
平和の祈りをテーマにお届けするコンサート。男性5人の美しいハーモニーをお聴き下さい。
◇日時:11/14(金)18:30-19:30
◇場所:エントランスロビー
◇料金:無料
◇定員:80席(要整理券)、他立見※整理券がない方は立見
申込み方法・整理券配布の詳細はこちら>>
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=851
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2)展覧会情報
■企画展
○10/3(金)-11/27(木)
「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展
戦後日本の具象彫刻界を牽引した彫刻家・舟越保武(1912-2002)。
清廉で静謐な空気を湛えた女性像により広く知られる舟越は、敬虔な
カトリック教徒として宗教的な主題に基づいた作品もまた多く残して
おり、長崎26聖人の記念像はその代表作です。本展は初期から晩年に
わたり制作された彫刻約41点、素描約33点を介し、その豊かな造形の
軌跡を紹介します。
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/kikaku/index.html
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■美術館コレクション展
長崎県美術館は、主に長崎ゆかりの美術とスペイン美術を収集して
います。常設展示室ではこれらの作品を年数回の展示替えにより
随時ご紹介いたします。
○9/11(木)-12/14(日)
「長崎の教会と洋館」
○9/11(木)-12/14(日)
「須磨コレクションの彫刻」
○6/24(火)-10/13(月・祝)
「須磨コレクション2」
○7/15(火)-10/13(月・祝)
「東松照明『ブリージングアース』」
○6/24(火)-10/13(月・祝)
「スペイン近現代美術2」
○8/24(日)-10/26(日)
ながさき音楽祭2008 開催記念「山本森之助作品 特別展示」
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/index.html
《展示替え》
○10/15(水)-2/8(日)
「須磨コレクション3」
○10/15(水)-1/12(月・祝)
「スペイン近現代美術の紙作品」
○10/15(水)-2/8(日)
「スペイン近現代美術3」
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3)注目イベント
■「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展 関連企画
○学芸員によるギャラリートーク
◇日時:毎週日曜日 14:00-14:30
◇会場:企画展示室
◇料金:無料(高校生以上は観覧券が必要)
■「美術館コレクション展」関連企画
○学芸員によるギャラリートーク
◇日時:毎週日曜日 15:00-15:30
◇会場:常設展示室
◇料金:無料(観覧券が必要)
○アートボランティアによるギャラリートーク
◇日時:毎週土曜日
(1)13:30-14:15 (2)15:00-15:45
◇会場:常設展示室
◇料金:無料(観覧券が必要)
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■音楽イベント
○イブニングライブ
毎月第2・4日曜日の夕方から夜にかけて活水女子大学音楽学部と
長崎大学教育学部の音楽家のみなさんが素敵な音楽を奏でます。
『美術』と『音楽』の融合…あなたの日曜の夕方から夜の過ごし方
に加えてみませんか?
・10/26(日)By長崎大学 (1)16:00-16:30 (2)18:00-18:30
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do;jsessionid=E42784F95AC5EFB1249D0EB5278F9E39?command=lecture&id=745
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4)今月のピックアップ
「彫刻家 舟越保武 -かたちに込める祈り-」展 学芸員 野中明
学芸員の野中です。現在、10月3日からはじまる彫刻家・舟越保武
(1912-2002)の展覧会準備の大詰めでテンパッています。
舟越保武は長崎市の西坂に建つ日本二十六聖人の記念碑の作者です。
また、自らもクリスチャンであった舟越は、島原の乱の際に原城で殲滅
されたキリスト教徒や農民たちに対する想いを主題とした《原の城》を
制作するなど、長崎と縁のある作家です。また、作家自身が「ながい間、
さがし求めていたものを、やっと見つけ出した」と語った諫早石(砂岩)
を彫刻に使用するなど、素材の面でも長崎に深い関係を持っています。
この展覧会は、ご遺族の多大なご協力をいただき実現しました。また、
作家の故郷である岩手の県立美術館からも、長崎だからということで、
特別なご協力をいただきました。実は、舟越の代表作のほとんどは岩手
県立美術館に収蔵されており、岩手の美術館には舟越専用の常設展示室
があるのです。もし、舟越の代表作を大量に貸し出せば、あちらの展示
が困ってしまい、舟越作品を目的に来館されるお客様にも迷惑がかかって
しまいます。作品借用のお願いをした当初は、あちらも「協力したいのは
山々なのだけど・・・」と困っておられましたが、特別に貸し出しを許して
くださいました。
というわけで、舟越の本格的な展覧会を開催することはとても難しく、
今後、岩手以外でいつ舟越のまとまった作品を見ることができるか、誰も
予想できません。ぜひこの機会をお見逃しなく、舟越のすばらしい作品に
触れていただきたいと願っています。
ついでに図録の宣伝もさせてください。舟越は彫刻だけでなく、すぐれ
たエッセイも多数残しています。これらのエッセイは本としてまとめられ
ているのですが、今回の図録には出品作品に関係する文章をそこから抜粋
させていただいています。また、図版も今回の展覧会のために撮影した写
真をふんだんに使用し、何と贅沢なことに、モノクロ調の図版も全て4色
印刷で深い諧調を出しています。A5版と扱いやすく、デザインも綺麗に
仕上がったと自負しています。舟越保武に関する書籍の決定版として、
ぜひお手元に一冊!
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5)カフェ情報
「秋・冬に向けた新作スウィーツ 10月3日(金)より新登場!」
10月3日(金)より、当館カフェプロデューサーであるフランス料理界
の巨匠、上柿元氏が秋冬に向けたスウィーツ5品を新しく創作しました。
弾力のあるチョコレートのビスキュイに、カシス風味のチョコレート
クリームとカシスの実(黒スグリ)をサンドしたチョコレートケーキや、
しっとりとしたスポンジに香り豊かな西洋梨を軽いクリームでサンドした、
オリジナルショートケーキなど、味も見た目もとても上品な品揃えです。
季節のフルーツタルトは、夏向けのフルーツから柿を使った秋らしい
フルーツタルトに衣替えです。
また、少し早めのクリスマスに向けたお知らせです。
カフェでは初めて、上柿元氏による当館オリジナルクリスマスケーキを、
30個限定で予約販売することになりました。長崎県産イチゴをふんだんに
使用し、高級生クリームで仕上げています。イチゴのサンタクロースの
トッピングが楽しいクリスマスを演出します。
予約販売は11月1日(土)-12月10日(水)、価格は3,500円(税込)、先着
受付です。詳しくは下記ページを参照下さい。
この秋冬、美術館カフェでスウィーツを堪能しませんか?
http://www.nagasaki-museum.jp/goods/goods/cafe.html
(カフェからのお知らせ)
2008年10月1日(水)-2009年3月末の期間、カフェの営業時間が
11:00-19:00(ラストオーダー18:30)に変更となります。
※美術館の開館時間は10:00-20:00
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《お問合せ》長崎県美術館 長崎市出島町2-1 tel095-833-2110
【休館日】第2・第4月曜(祝日の場合は翌火曜)
《長崎県美術館メールマガジン》
配信中止・配信先変更は、以下のホームページからアクセスできます。
http://www.nagasaki-museum.jp/
長崎県美術館──────────────────────────