長崎県美術館 メルマガ(vol.67)

件名
長崎県美術館 メルマガ(vol.67)
配信日時
2010/3/26 10:32
本文
(vol.67)──────────────────────────

メルマガ長崎県美術館

□────────────────────────○2010/3/26


INDEX

1)館長コラム
2)展覧会情報
 ・企画展「再興第94回 院展」
 ・次回企画展「山下清展-放浪の天才画家」
 ・美術館コレクション展ピックアップ
開館5周年記念 プラド美術館所蔵
エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示ほか
3)注目イベント
 ・エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示 記念フォーラム
 ・ピアノお披露目コンサート
 ・イブニングライブ
4)カフェ情報

□─────────────────────────────○

1)館長コラム
─────────────────────────────── 
「夕陽を見つめるチンパンジー」    館長 米田 耕司
─────────────────────────────── 
■休載のお詫び
 1月後半から風邪をこじらせて、病院のお世話になり本号を1月、
2月と2回休載してしましました。ヒトも動物であるので安静にして
1週間動かないでいると、体重が6キロも減り食も細くなり、
考えることもマイナス思考ばかりでした。でも、もう大丈夫です。
ただ、この療養期間にいのち(生命)や美について考える時間を
もてました。いのちと美の出会いについて少しお話します。               

■夕陽を見つめるチンパンジー
 2008年6月に当館で開催したイタリアの世界的美術家でデザイナーの
エンツォ・マーリさんの講演会で「美とチンパンジーの逸話」が
面白く忘れられない。フランスの文化人類学者の観察だそうだ。
チンパンジーの群は夕方になると樹上の棲家に戻ってくるが、
群の中に、毎日決まって夕暮れ時になると遅刻する兄弟がいた。
なぜかと思い研究者が後をつけるが足が速いので何度も見失い、
やっと追跡に成功した。そのチンパンジー達は崖の縁まで出かけて行った。
そこで目撃したものは崖の端に兄弟で肩を組んで遠くを見つめている光景で、
その視線の先には、サバンナに沈み行く大きな太陽があった。
マーリさんは身振り手振りで観てきたように助手を使って
肩を組みながら語った。サバンナの地平線に沈んでゆく太陽を
じっと見つめている。ぐーっと沈んでいくでっかい太陽を、
身じろぎもせず見つめていた。感動したように夕陽を見つめるチンパンジー。
兄弟は何を想っているのだろう。
この話の根拠を知りたくて、50年来の友人でサル学者の三戸幸久君
(『サルとバナナ』〔東海大学出版会〕の著者)に質問した。
彼から鈴木晃著『夕陽を見つめるチンパンジー』(丸善ライブラリー)に
紹介されている、と教示された。鈴木晃さんはその本の中で
「次のような光景を観察して感動したことがある。」と記している。
それは一頭の若いおとなのオスのチンパンジーの行動の記録であるが、
以下引用する。「私(=鈴木さん)は帰りかけようとしていると、
一頭の若いオスのチンパンジーが、小高い樹に上ってきた。
そのチンパンジーは、するすると樹のずっと梢近くまで登っていくと
枝に座り込み、遠くの方を眺め出した。(略)やがて、空が紅く染まり
川辺林のほの暗い林床まで、その紅い夕陽がさし込んでいるのに気づいた時、
私はそのチンパンジーが、沈んでいく太陽を、染まっていく夕空を
眺めているのだということを確信した。彼はいつまでも、夕陽を眺めながら、
そのままの姿勢で座っていた。」
野生動物というのは決して意味のない行動、無駄な行動はしないものらしい。
しかも崖の縁で夕陽を見つめる。これは無意味な行動で、本来ありえない。
夕焼けの空と大きな紅い太陽に美への感動があったものと思いたい。

■美との出会いがヒトを進化させた
 スペインのアルタミラ洞穴やフランスのラスコー洞穴の壁画は
1万5千年前に描かれた。躍動感、色彩、どれをとっても素晴らしい。
人類は猿人、原人、旧人、新人と進化し、私たちヒトは新人、
最後まで並走したネアンデルタール人は旧人だが、最後に生き延びたのは
私たち新人だった。
旧人ネアンデルタール人が滅亡しヒトが生き残った理由は、
彼らになくて私たちにあったもの、「壁画と装身具」の存在が重要だという。
新人は絵や工芸品を創ることで、美術活動を獲得した。ヒトはイメージを
デザインすることで世界を開拓した。環境に適応できた。美術活動を
していたことによってヒトは進化したとする仮説は面白い。

■「いのち」と「かたち」
 「いのち」の語源は「息の内・生きている血」。「かたち」は
「カタ+チ」。カタ(型)は反復し同じモノを生む。チはイノチであり
血である。お母さんの血が赤ちゃんの口に入るとオッパイになり
「チ・チ」となりイノチが巡る。美術作品に感動するのもそこに
カタ・チの美で、作者のイノチと心が巡っているからである。

================================

2)展覧会情報
─────────────────────────────── 
■企画展(企画展示室)
○開催中-4月11日(日)
再興第94回 院展
─────────────────────────────── 
日本で最も歴史のある日本画の公募展、日本美術院展覧会、通称「院展」。
故・平山郁夫最後の出品作、長崎県出身の松尾敏男をはじめとする
日本美術院同人作家の新作33点、受賞作品、および九州出身・在住作家の
入選作品を含む73点を一堂に展示いたします。現代日本画の粋を
心ゆくまでお楽しみください。

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/kikaku/index.html

─────────────────────────────── 
■次回企画展(企画展示室)
○2010年4月17日(土)-6月20日(日)
「山下清展-放浪の天才画家」
─────────────────────────────── 
「日本のゴッホ」、「裸の大将」の異名を持つ放浪の画家・山下清(1922-71)。
今なお多くの人々を魅了してやまない素朴で美しい貼絵をはじめ、
ペン画、油彩画、日記など多様な作品と資料によってドラマに満ちた
彼の人生と芸術を紹介します。長崎の風景を描いた「長崎三部作」も特別公開!

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=plan&id=609

-------------------------------------------------------------
関連企画 講演会-1 「家族が語る山下清」
-------------------------------------------------------------
◇日時:4月17日(土)14:00から
◇講師:山下 浩氏(山下清作品管理事務局代表)
◇会場:ホール
◇定員:120名
※聴講無料(ただし、本展観覧券の半券が必要です)

-------------------------------------------------------------
関連企画 講演会-2 「修復家が見た天才・山下清-絵に隠された秘密」
-------------------------------------------------------------
◇日時:5月23日(日)14:00から
◇講師:岩井希久子氏(絵画修復家)
◇会場:ホール
◇定員:120名
※聴講無料(ただし、本展観覧券の半券が必要です)


─────────────────────────────── 
■美術館コレクション展(常設展示室)ピックアップ
─────────────────────────────── 
常設展示室の第1室から5室では、長崎ゆかりの美術とスペイン美術を
年数回の展示替えにより随時ご紹介しています。
今回は、4月の展示をピックアップしてご紹介します。

現在開催中の展示はこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/whats_new/jousetsu/index.html

-------------------------------------------------------------
第1室
4月20日(火)-6月13日(日)奈良原一高「人間の土地」
-------------------------------------------------------------
戦後日本を代表する写真家・奈良原一高(1931- )の出世作「人間の土地」。
最盛期の軍艦島の姿が収められるこのシリーズを、作家が長年手元に
保管していたマスタープリントによって紹介します。

-------------------------------------------------------------
第4室
4月23日(金)-10月24日(日)
「開館5周年記念 プラド美術館所蔵
 エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示」
-------------------------------------------------------------
長崎県美術館開館5周年を記念して、交流の覚書を交わしている
スペイン国立プラド美術館から、日本でも高い人気を誇るスペインの画家、
エル・グレコ(1541-1614)の《聖母戴冠》を特別展示します。

ギリシアに生まれたエル・グレコは、30代半ばから没するまでの半生を
スペインのトレドで過ごし、どのスペイン人画家よりもスペイン的な精神と、
カトリック的な熱情に満ちた作品を描いたことで高く評価される芸術家です。
《聖母戴冠》は彼が50歳の頃の作品で、独特の揺らめく炎のような人体や、
まばゆい超現実的な光彩の表現を堪能することが出来る名品です。
エル・グレコは日本においても高い人気を誇りますが、現在国内で
所蔵されている作品は2点のみであり、この《聖母戴冠》は
日本初公開となります。
マニエリスム最後にして最大の画家エル・グレコが描いた天の光彩を、
ぜひご堪能ください。

================================

3)注目イベント
───────────────────────────────
■エル・グレコ《聖母戴冠》特別展示 記念フォーラム
 「エル・グレコ:変貌の過去と現在」
───────────────────────────────
プラド美術館所蔵のエル・グレコ《聖母戴冠》が特別展示されるにあたり、
記念フォーラムを開催します。

◇日時:4月24日(土)【第一部】13:00-14:50 【第二部】15:10-17:00
◇会場:ホール
◇定員:第一部・第二部とも各100名(先着順)
◇聴講無料(ただし、美術館コレクション展観覧券が必要です)

-------------------------------------------------------------
【第一部】13:00-
◇レティシア・ルイス・ゴメス(プラド美術館学芸員)講演会
-------------------------------------------------------------
13:00-13:20
◇事業報告:「長崎県美術館とプラド美術館の交流事業とエル・グレコ《聖母戴冠》」
 野中明(当館学芸員)

13:20-14:50
◇基調講演:「エル・グレコの絵画における聖母マリア像」(スペイン語講演)
 レティシア・ルイス・ゴメス
 逐次通訳:久米順子(東京外国語大学大学院講師)

-------------------------------------------------------------
【第二部】15:10-
◇トーク・セッション「エル・グレコ:変貌の過去と現在」 
-------------------------------------------------------------
15:10-15:35
◇トーク1:「遍歴の画家エル・グレコ像の変転-過去から現在、そして未来へ」
 大高保二郎(早稲田大学文学学術院教授)

15:35-16:00
◇トーク2:「エル・グレコの初期活動に関する若干の考察(仮題)」
 越川倫明(東京藝術大学美術学部教授)

16:00-16:25
◇トーク3:「見果てぬ夢-須磨彌吉郎とエル・グレコ」
 川瀬佑介(当館学芸員)

16:30-17:00
◇ディスカッション
 出演:レティシア・ルイス・ゴメス、大高保二郎、越川倫明、川瀬佑介

───────────────────────────────
■美術館に新しいピアノが来た!『お披露目コンサート』
───────────────────────────────
美術館に新しいピアノがお目見えします。これをお祝いして、
長崎県美術館にゆかりのある演奏家の皆さんによるお披露目コンサートを
開催いたします。

◇日時:4月4日(日)13:30-17:00
◇会場:エントランスロビー
※入場無料

【ピアノ開き式】13:30-13:45 ピアノ連弾

【第1部】14:00-15:00 ジャズステージ
 出演:小國 雅香(ピアノ)、丹羽 肇(ベース)、三露 一樹(ドラム) 

【第2部】16:00-17:00 クラシックステージ
 長崎大学:堀内 伊吹(ピアノ)、加納 暁子(ヴァイオリン)、
      小川 勉(クラリネット)、種口 敬明(ファゴット) 
 活水女子大学:松下 知子(ソプラノ)、宮本 絵理子(ピアノ)
 OMURA室内合奏団:中西 弾(ヴァイオリン)、 亀子 政孝(コントラバス)、
         江藤 麗香(ピアノ)-Trio Rosso- 

───────────────────────────────
■イブニングライブ
───────────────────────────────
毎月第2・4日曜日の夕方から夜にかけて活水女子大学音楽学部と
長崎大学教育学部の音楽家のみなさんが素敵な音楽を奏でます。
『美術』と『音楽』の融合…あなたの日曜の夕方から夜の過ごし方
に加えてみませんか?。

-------------------------------------------------------------
○活水女子大学による演奏
-------------------------------------------------------------
県内外で活躍している卒業生の演奏家たちを中心に、ショパンのワルツや
シューベルトの歌曲などをお届けします。

◇日時:4月11日(日)(1)16:30-17:00 (2)18:30-19:00
◇場所:エントランスロビー
※入場無料

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=1188

-------------------------------------------------------------
○長崎大学による演奏
-------------------------------------------------------------

◇日時:4月25日(日)(1)16:30-17:00 (2)18:30-19:00
◇場所:エントランスロビー
※入場無料

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/museumInet/sca/eveScheduleView.do?command=lecture&id=1189

================================

4)カフェ情報
-------------------------------------------------------------
新スウィーツ「桜いちごの龍馬パフェ」
-------------------------------------------------------------
カフェでは、カステラと季節のフルーツを使ったパフェが新しく
登場しました。
坂本龍馬も好んで食べたと言われる「カステラ」を使い、季節ごとに
違う顔を持つパフェが登場します。まずは、桜のアイスと甘酸っぱい
イチゴの相性がよい、春らしいパフェ。まろやかな甘さのオレンジ
リキュールがしみ込むカステラは大人の味わいです。

桜いちごの龍馬パフェ/単品700円(税込)

カフェ営業時間/10:00-20:00
パフェ/10:30-19:30(ラストオーダー)
ドリンク&ケーキ/10:00-19:30(ラストオーダー)
フード/11:30-17:30(ラストオーダー)

詳しくはこちら↓
http://www.nagasaki-museum.jp/goods/goods/cafe.html

□──────────────────────────────○

《お問合せ》長崎県美術館 長崎市出島町2-1 tel095-833-2110
【開館時間】10:00-20:00
【休館日】第2・第4月曜(祝日の場合は翌火曜)
     ※4月26日(月)は臨時開館

《長崎県美術館メールマガジン》
 配信中止・配信先変更は、以下のホームページからアクセスできます。
http://www.nagasaki-museum.jp/

長崎県美術館──────────────────────────

ページトップへ戻る